神に選ばれなかった者達 前編
空に望みを託すとてⅡ
?side
――――――…誰かの為に戦う者は、時に自分の意志で戦う者より強い力を発揮する。
自ら生贄に志願してきた「彼」を見ているうちに、俺はそのことを知った。
「…何を見ているのですか、クロティルダ」
「…リューイ…」
生贄に選んだ人間達を見下ろしている俺のもとに、一人の仲間がやって来た。
「…生贄の彼らを」
「…そうですか」
リューイは、表情を曇らせた。
彼は他の仲間達と違って、人間に対して寛容な考えを持っている。
人間を憐れむ仲間は、俺と、このリューイ…そして、俺達の主くらいである。
「また…新たに生贄が増えた」
その姿を見ていると、俺は心が痛む。
…心が痛むなどと、本当は考えてはいけないのだろう。
しかしリューイだけは、俺の気持ちを察したように頷いた。
…そして。
「…この者は、確か…」
地上を見下ろして、とある生贄の一人に視線を移した。
「自ら生贄を志願したという…?」
「…あぁ」
最初、生贄として賽が選んだのは、彼の妹だった。
しかし彼は、自ら生贄に志願した。
その強い意志に応える形で、俺は彼を生贄に選んだ。
その判断が正しかったのか、間違っていたのかは分からない。
それでも、彼は未だに、その選択を後悔していない。
それどころか、俺が見るに。
彼は生贄の中で一番、よく笑う。
皆が悲壮な顔つきをしていても、彼だけはいつも、妹に優しく微笑みかけるのだ。
誰かの為に戦うことが、何よりも自分の力になる。
ある意味で彼は、一番生贄に相応しい人物だった、と言えるのかもしれない。
「何故そうまでして…。妹の為に命を尽くせるのか…」
リューイの独り言にも似た問いかけに、俺は答えた。
「あの娘は、彼の希望だからだ」
空音いそら。そして、空音のぞみ。
この二人は、互いがなくてはならない存在なのだ。
…それこそ、失っては一秒たりとも生きていけないほどに。
自ら生贄に志願してきた「彼」を見ているうちに、俺はそのことを知った。
「…何を見ているのですか、クロティルダ」
「…リューイ…」
生贄に選んだ人間達を見下ろしている俺のもとに、一人の仲間がやって来た。
「…生贄の彼らを」
「…そうですか」
リューイは、表情を曇らせた。
彼は他の仲間達と違って、人間に対して寛容な考えを持っている。
人間を憐れむ仲間は、俺と、このリューイ…そして、俺達の主くらいである。
「また…新たに生贄が増えた」
その姿を見ていると、俺は心が痛む。
…心が痛むなどと、本当は考えてはいけないのだろう。
しかしリューイだけは、俺の気持ちを察したように頷いた。
…そして。
「…この者は、確か…」
地上を見下ろして、とある生贄の一人に視線を移した。
「自ら生贄を志願したという…?」
「…あぁ」
最初、生贄として賽が選んだのは、彼の妹だった。
しかし彼は、自ら生贄に志願した。
その強い意志に応える形で、俺は彼を生贄に選んだ。
その判断が正しかったのか、間違っていたのかは分からない。
それでも、彼は未だに、その選択を後悔していない。
それどころか、俺が見るに。
彼は生贄の中で一番、よく笑う。
皆が悲壮な顔つきをしていても、彼だけはいつも、妹に優しく微笑みかけるのだ。
誰かの為に戦うことが、何よりも自分の力になる。
ある意味で彼は、一番生贄に相応しい人物だった、と言えるのかもしれない。
「何故そうまでして…。妹の為に命を尽くせるのか…」
リューイの独り言にも似た問いかけに、俺は答えた。
「あの娘は、彼の希望だからだ」
空音いそら。そして、空音のぞみ。
この二人は、互いがなくてはならない存在なのだ。
…それこそ、失っては一秒たりとも生きていけないほどに。