幼馴染の御曹司との契約結婚には秘密があって!?
挨拶



 ***

縁談を断りたい涼成くんから結婚の申し出を受けて数週間後。

月が変わって八月に入ると涼成くんの実家に呼ばれて、彼の両親に結婚の報告をすることになった。

子供の頃は頻繁に訪れていた多岐川家のお屋敷に来るのは十六年振り。

涼成くんは今はもう実家を出て都内のマンションでひとり暮らしをしているそうだ。結婚後は私もそこに住む予定になっている。

涼成くんの実家へは彼の運転する車で来た。

立派な門の前に車を停めて降りると、使用人の男性がすぐに駆けつけてくる。彼は運転席に乗り込み、車を駐車場へと停めに向かった。

門をくぐった先にある広々とした庭を進み、その奥に本邸が見えてくる。私がよく訪れていた当時と変わらない景色に懐かしさが込み上げた。

涼成くんに促されてお屋敷の中に入ると、玄関では彼の両親が私たちの到着を待っていた。

「久しぶりね、柚葉ちゃん。また会えてうれしいわ」
「元気にしていたかな」

涼成くんのお母様とお父様が私との再会をよろこんでくれた。

ふたりに会うのも十六年振りだ。

「ご無沙汰しております」

私は深く頭を下げる。


< 42 / 151 >

この作品をシェア

pagetop