幼馴染の御曹司との契約結婚には秘密があって!?
顔合わせ
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豚肩ロースのブロック肉をたこ糸でしばって結んでから大きめの鍋に入れる。転がしながら全体に焼き色をつけて、生姜や長ネギなどを加えて煮立てる。
出てきたアクを取ったら砂糖、酒を加えて三十分ほど煮込む。
「いい匂いがするな」
キッチンで料理に集中していると自室で仕事をしていた涼成くんが来た。
彼と結婚して、一緒に暮らし始めてから一か月が過ぎ九月になった。
涼成くんとの生活は特に不便なことも困ったこともなく、どちらかといえば快適に暮らしている。
今日はふたりとも休みだが涼成くんは朝食の後から自室にこもり仕事をしていた。
子供の頃から勉強熱心な人だったけれど、大人になった今は一日のほとんどの時間を仕事に費やしているようだ。
平日は朝早く出社するし帰宅も遅い。
現在はおじい様が会長を務めるTAKIGAWAホールディングスで役員をしているらしいが日々多忙なのだろう。
ひとりで暮らしていた頃は食生活も乱れていたようでほぼ外食ですませていたらしい。
立派なキッチンがあるのに自炊をしていた形跡もなければ、冷蔵庫はミネラルウォーターなどの飲み物や食事代わりにしていたのだろうゼリー飲料くらいしか入っていなかった。