幼馴染の御曹司との契約結婚には秘密があって!?
デート



 ***

九月の後半になっても厳しい残暑が続いている。

今日は休日で同僚の美紅と午前中は出掛ける予定があった。

ランチをすませてから解散となり帰宅の途につく。

休日で賑わう街中を、日傘を差して歩きながらふと考えてしまうのは先日の涼成くんの言葉。

『今度は俺が柚葉を守る番だ』

すぐに理解できなかったけれど、あれからしばらく考えて思い出してきたことがある。

十六年前――父が亡くなり、伯父に引き取られるときに涼成くんから言われた言葉。

『柚ちゃん。もしいつか、きみを泣かせるような人がいたら僕に言って。必ず守るから』

もしかして涼成くんはその約束を守ろうとしているのだろうか。

だから伯父への借金を肩代わりしてくれた。それに、梨央ちゃんにも私に雑用を押し付けるのをやめるよう強く言ってくれた。

すべて私のために……。

再会してからの涼成くんは子供の頃と比べて冷たい人に変わってしまったと思っていた。

でも、きっと根っ子の部分は変わっていない。

彼は今でも優しい人だ。


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