異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
6・公爵家の愛娘、命を狙われる
「むきゅ……」

 耳元で、不安そうな獣の鳴き声がする。
 はっと目覚めたロルティはごろりと横に転がり、アンゴラウサギと視線を交わらせた。

「うさぎしゃん……?」

 パチクリと瞳を瞬かせたロルティは、そこで獣のある変化を目撃した。
 右耳に見慣れぬ毛糸で作られた、リボンが結び付けられていたのだ。

「ふわふわの、リボン!」
「むきゅ?」

 何を言われているのかさっぱり理解できないと、アンゴラウサギが首を傾げる中。
 ロルティはキョロキョロとあたりを見渡し、ベッドにいる兄の姿を捉えた。
 彼の胸元にも、意識を失う前までは身につけていなかったはずのリボンが飾られている。

 ロルティはパァッと花が綻ぶような満面の笑みを浮かべると、大声でジュロドを呼んだ。

「おにいしゃま!」
「お目覚めかな? 僕のかわいい妹。そんなに大きな声を出して、どうしたの?」
「お耳! お揃いなんだよ!」
「うん。ロルティなら、すぐに気づくと思っていたよ」
「メイドしゃん?」
「誰だと思う?」

 使用人でなければ誰だと言うのか。
 ロルティには心当たるフシがなく頭の中をはてなマークでいっぱいに満たせば、兄は口元を綻ばせながら正解を教えてくれる。
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