日陰令嬢は常に姿を消して生活したい~あれ?私って転生者?陰から皆さんをお守りいたします。
お茶会

 *

「ライナー、前にも話したのだけれど、あなたの奥様とお茶会が開きたいのよ。どうかしら?」

 そう聞いてきたのはリリーナ嬢だ。

「王太子妃様、妻はあまり部屋から出たがらないのです。ですので難しいかと……」

「ライナーったら、まだ王太子妃では無いわ。婚約者よ」

「ですが、来月には王太子妃様になられます」

「確かにそうね。でもまだリリーナ嬢でお願いね」

「分かりました」

「それにしてもライナーの奥様はお体でも悪いの?」

「そういうわけでは無いのですが……」

「それなら聞くだけ聞いてみてちょうだい。ここではお友達が作れないし、寂しいのよ」

「分かりました。聞いてみます」

 俺は陛下と話をしてから、我が妻が妖精の少女だったのでは?と、思いながらもそれを聞けずにいた。今まで冷たく接してきて、今更どうアメリアと接したら良いのか分からなかった。しかしこの茶会はチャンスなのでは無いか?アメリアとゆっくりと過ごし、会話をするチャンスなのでは……。

 俺は屋敷に帰ると、早速アメリアの部屋へと向かった。しかしアメリアが俺に会ってくれることは無かった。

 アメリアは俺と会うことを拒絶している。

 当たり前か……。

 結婚してからこうして部屋に訪れるのは初めての事。

 顔をあわせれば喧嘩ばかり……。

 俺は自室に戻りアメリアに手紙を書いた。今まで放置をしてすまなかったということ、これからは喧嘩などせず、優しく接するということ、これからは少しずつでも距離を縮めていきたいこと、それからリリーナ嬢からのお茶会の誘いがあることを手紙に書いた。この手紙を受け取ってくれると良いのだが……。そう思いながら手紙をアメリアの専属侍女に手渡した。

 後は返事を待つだけだ。

 そう思っていると次の日には手紙の返事が返ってきた。

 その内容を見て、俺は歓喜で震えた。

 距離を縮める事に対し、譲歩すると書いてあったのだ。これで一歩前進だろう。そして、お茶会にも参加すると記されていた。

 俺は安堵から、大きく息を吐き出した。

「良かった……」



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