日陰令嬢は常に姿を消して生活したい~あれ?私って転生者?陰から皆さんをお守りいたします。
婚姻式
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アーサー殿下とリリーナ嬢の婚姻式当日――――。
空は曇天の雲に覆われ雨が降っていた。小説の世界ならこういう日は青天になるだろう。しかし、現実の世界は都合良く晴れることは無い。つくづくここは小説の世界では無く現実の世界なのだと、思い知らされる。
本日の予定は、アーサー殿下とリリーナ嬢が王都内をパレードし、その後王城内で婚姻式の予定だった。しかし、雨天のためパレードは後日に延期となった。アメリアはパレードが延期となり、ホッと胸を撫で下ろしていた。なぜなら何処から襲撃を受けるか分らないパレードの護衛は危険を伴う。アーサー殿下とリリーナ嬢を守りながら、民も守る。それがどれだけ大変な事か……。日にちが分けられたことで、婚姻式にのみに集中することが出来る。
婚姻式に全集中するため、私達影は動き出した。
雨の中、沢山の馬車が王城に向かって走ってくる。それをアメリアは王城の上から眺めていた。ここは王城の一番高い棟の上に位置する場所だ。アメリアの確認出来る所から対角線上に影達が配置していた。
現在は特に変わった所は無いか……。
最後の確認とばかりに私達は王城の隅から隅まで安全を確認し、現在王城に到着する馬車を棟の上から眺めていた。
「ボス、そろそろ時間じゃないっスか?」
「ボスのドレス姿、楽しみですぅー」
「……うん」
影達の言葉に頷き、立ち上がった。私はこれから婚姻式に参加するために、準備を始めなかればならない。
「そうね。シャルルが待っているから私は先に行くわ。あなた達も準備が出来たら広間に来てちょうだい。ここからは更に気を引き締めていくわよ」
「「「はっ!」」」