御曹司様の一目惚れ人生ゲーム〜私はただ愛されたかっただけ〜花村三姉妹   葉子と仁の物語
彼女の壊れた心
橋から見える青く光を放つタワーがかすんで見えるのは、小糠雨(こぬかあめ)のせいだからかな?




やはりこの町に、この橋に戻ってきてしまった。どれくらいここから夜の闇に染まった川を見つめているのだろうか?


5月上旬とは言え、この雨のせいで上着なしでは肌寒く感じるが、今の私にはもうどうでもいい。このまま雨と一緒に川へ降り注ぎ、流されて消え去りたい……。


どうして、生まれてきちゃったんだろう?
なぜ、私を産んだの?


どうして、愛してくれなかったんだろう?
なぜ、私を愛さなかったの?


やっぱり、あんたも同じだった。
私はただ愛されたかっただけ、あんたから。


頭の中で連呼している言葉。




目に映るものがぼやけている。やはり雨が降っているから。


……、それとも私の涙?


あれ、私、泣いているの?


養女になったあの日から、絶対に泣かないって決めたのに。これからはずっと笑っていようって。




父さまは私の笑顔が好きで、『Happy Sunshine 』と呼んでくれる。


母さまは『血なんて関係ない。誰がなんて言おうと、ようちゃんは私たちの大切な娘』と言ってくれる。


姉の圭衣は『葉子を傷つける人は、私がぶん殴ってやる。だって葉子も私の大切な妹だから』と血の気が多い発言をしてくれる。


妹の美愛は『ようちゃんと私は双子。いつでもようちゃんの味方だからね。大好きだよ』と見えない絆を深めてくれる。


私は大好きなこの家族も失ってしまうのだろうか? また一人になっちゃうのかな?


だんだんと目の前が暗くなり、その後のことは覚えていない……。


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