御曹司様の一目惚れ人生ゲーム〜私はただ愛されたかっただけ〜花村三姉妹   葉子と仁の物語

彼女

7月の日の出は早い。日中の暑さを避けるために、ここ最近早起きをして、早朝の5時にはアパートを出て運動がてら散歩に行く。


港に近い公園までのルートを歩きながら、あの日からのことを振り返っている。




あの日、マンションで降りずにタクシーで通り過ぎ、かなり離れた駅周辺のビジネスホテルで夜を過ごし、翌日高速バスでこの町に着いた。事前に予約したウィークリーマンションへ移り、すぐさま賃貸アパートを探すと同時に圭衣に連絡を入れる。


「葉子、あんたどこにいるの? 何があったの? 仁さんに連絡したの?」


矢継ぎ早に質問する圭衣の後ろから聞こえてくる美愛の半泣きの声。


「ようちゃん、無事なの? ねぇ、どこにいるの?」


彼女たちを心配させたことに心が痛むが、私の決心を聞いてもらうつもりだったから、二人が一緒で都合がいい。


「圭衣、スピーカーにしてくれる? そうしたら美愛にも聞こえるから。話したいこと、話さなきゃいけないことがあるの。でもそれは今じゃない……。もう少し落ち着くまで待って欲しい」


初めに圭衣に仕事の話をする。

出勤からリモートワークに切り替える。
今まで行っていた営業は他の社員が引き継ぐ。この条件が受け入れられない場合、辞職する。


しばらく考え込んだ圭衣は、私の予想外の返事をした。


「いいよ。あと、今話している内容も慶智の王子たちには言わないから」

「えっ?」

「何驚いてるのよ。言ったよね、葉子は私の大切な妹だって。仁さんから喫茶室での話は聞いた。でもあんたがここまでするってことは、その話以上に何かがあるんだろうって。で、どうするの、これから?」

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