永遠を糸で縫い留めて

銀杏

今年も金色の季節がやってきた


つめたい空気を裂くように そこだけあたたかな太陽の色をしている


まだらに幹にいろづいたその葉は あかるすぎてどこか悲しい


去年はあなたが隣にいた 


そこのベンチでふたりで缶コーヒーを飲みながら 他愛無い会話をして 


透明な空気が心地よかった いつまでもここにいたい 


私もそのまま透明になれたら どれだけ楽だっただろうか 


あれから濁ってしまった私を 今年の秋も銀杏は変わらずそばにいてくれる


薄青の空を染めるように 金色に泳ぐ葉 


近くにあるように感じるのに 手を伸ばしても届かない位置にある


あなたみたいな葉 


また枯れて 落ちて 消えてしまっても


来年の秋には 私の前にまた現れて


金色になって 空との境になってね 
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