永遠を糸で縫い留めて

濡れた本

お風呂で読んでいた本 風呂板を読み机にしていたのに


気を抜いたときに落として濡らしてしまった


ぬるいぬるいお湯のついたページ じわりと溶けて重なって


ベランダで干そうと 外の風にさらしていたら


突然の春の雨 さらに濡れてしまった


本は重みを増し 薄紫にいろづき ページとページは濡れて固まって動かない


悩んだ末 そのまま捨ててしまった

 

まだ半分も読めていないのに もったいないという気持ちが大きかったけれど


きっとまたどこかで会えるよ 読みたいもの あの本を


晴れた日の公園で ベンチに座って 風が森を揺らす音を聞きながら ゆっくりと 

< 392 / 484 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop