永遠を糸で縫い留めて

野分

貴女との出逢いは 風が通る中庭を歩いた時でした


緑よりもあざやかな御簾が はらりと上がったとき 


貴女の真白いおもてが見えました


私は 胸を やわらかな錐で とんと突かれたようで


鈍い麻痺にかけられました


雪でも降ってくれればよかったのに


そうすれば 今この時が 凍えた空気の中に 閉じ込められたことでしょう 


ああここに桜でも咲いていればよかったのに


すでに春は終わり 新緑だけが 私たちを包んでいましたね 


それもよかったけれど 
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