~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

19(しめしめ、うまくこちら側に取り込んでやる)

「まさか、ご自身で尋ねてこられるとは思わなかった。ああ、どうぞ」

 青年の手が、テーブルの上の湯気を立てた紅茶のカップを差す。それは彼の隣に立つ初老の執事が手ずから淹れたものだ。
 ジェミーは今、あの時助けてくれた青年と話し合いのテーブルに着いていた。黒髪の下で少しかげった赤の瞳がこちらの肚を探っている。

「私も、まさかあなたがあの手紙の送り主だとは思いもしませんでしたわ」
「あ、御嬢様」
「大丈夫よ、ミリィ」

 茶器に手をかけたのを後ろに立つミリィが心配したけれど、ジェミーは気にせずカップに口をつける。毒など入れるはずはない。この場で大貴族の娘であるジェミーを殺したなら、彼らもただでは済まないからだ。もしジェミーに、相当の恨みがあるなら別だが、それならあの日、ジェミーを身を(てい)して助けたりはすまいし。

「とても美味しいですわ」
「それはよかった」

 ペリエライツ家で提供されているのと遜色ないクラスの茶葉。その深い味わいに舌鼓を打つと、ジェミーは目の前でにこやかに微笑んでいる青年に語り掛けた。
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