～転生悪役令嬢の裏道攻略～ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

２７（見よ、これが決定的瞬間だ！）

　ワルツダンスを二、三曲楽しんだ後、兄は仕事の話があるからと言って貴族たちの中へ消えてゆく。

　ひとり残されたジェミーは王宮で供される軽食に手をつけながら、テーブル席でそこはかとなくクラフトとセニアの様子を見守っていた。隣に座って話しかけようとしてくる者もいるにはいたが、お得意の睨みつけでとっとと退散させ彼らの行動に集中する。

　軽やかな音楽がホールを包む中、どちらもぜひ一曲としつこく望まれているようで、クラフトはちらりとセニアの方を見たが、先ほどの件で彼女の機嫌は芳しくない。主催側という手前もあり、諦めて他の女性の手を取り代わる代わる踊り始めた。

　セニアはそんな姿に不満そうに目線を送った後、熱を上げる男性からの誘いを固辞しいったんホールから出てゆく。

「あんなようすで、本当にこの後ふたりの密会はあるんですかね？」

　ギロッ！
　ジェミーの蛇睨みにも動じず、隣に座ったのはルゼ・トーミアスだった。令嬢たちの相手が忙しかったのか、少し草臥(くたび)れた様子で背もたれに体を預ける。

「なんだ、あなたですか」