~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド
【第二部】

1(いざ、カレンベール帝国へ)

 ここは、とある世界の大きな大陸に存在する、レビエラ王国という名の国……ではなく。

 その隣国の、カレンベール帝国という大国の首都にある、皇宮の礼拝堂。歴史を感じさせる、重厚で壮麗な建物の奥には、一枚の巨大なステンドグラスが貼られている。

 何百枚もの色ガラスを組み合わせて作られたそれには、美しい銀の髪をした女性が、整った身なりの男性に向かって立派な冠を手渡す光景が緻密に描かれている。
 その美しい光景を前にひとりの、いかにも位の高そうな壮年の男が祈りを捧げた。

「おお、女神カレンよ。どうか再び姿を現し、我が国を困難から救いたまえ」

 だが、その言葉に答える者はおらず、男が長い時間目を閉じていると後ろから扉を開く音がし、控えめな足音が近づいて来る。
 現れたのは、絹のドレスを纏ったひとりの清楚可憐な女性だ。彼女は男の真後ろに立つと、静かに声をかけた。

「お父様、こんな朝早くから……またこちらにいらっしゃっていたのですか」
「リーザか……」

 壮年の男は静かに目を開くと立ち上がり、悲痛な表情で口を開いた。
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