~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド
4(ジェミー御嬢様、おかしくなっちゃったみたいです)
「ねえ、聞いた? あのジェミー御嬢様のこと」
かちゃんかちゃん。ざわざわ。
猥雑な屋敷の使用人食堂にて、そんな声が背中の後ろから聞こえ、ひとりの侍女がコーンスープを掬う手を止め、耳を傾ける。
彼女はペリエライツ公爵家息女ジェミー様専属の侍女として雇われている、ミリィ・ハーレントという女性だ。専属と言えば聞こえはいいが、およそこちらから代わってくれと言っても断られること請け合いの地獄の待遇。なんせあの御嬢様は我儘で、傲慢で、人でなしで冷血で、使用人など家畜と同等としか思っていない恐ろしいお方なのだから。
いや、だったというべきか――。
「雷で生死の境をさまよってから、どうも人格が変わってしまったそうよ」
「またまたぁ。そんなに簡単に性格が変わるわけないじゃない」
「ところがどっこい、こないだキャサリンがつい手を震わせてお盆からグラスを落っことした時、お咎めにならなかったそうよ。それどころか、慌てて破片を手で拾おうとして怪我をした彼女の手をハンカチで包んでくださったんですって」
「あたしも聞いたわ。庭師のロバートが石畳に足をつっかけて転んでしまった時も、しゃがんで手を差し伸べてくださったんですって。いつもなら、『この愚鈍な豚が。ク・ビ・よ』とか言って、即刻屋敷を追い出しそうなものなのにねぇ」
かちゃんかちゃん。ざわざわ。
猥雑な屋敷の使用人食堂にて、そんな声が背中の後ろから聞こえ、ひとりの侍女がコーンスープを掬う手を止め、耳を傾ける。
彼女はペリエライツ公爵家息女ジェミー様専属の侍女として雇われている、ミリィ・ハーレントという女性だ。専属と言えば聞こえはいいが、およそこちらから代わってくれと言っても断られること請け合いの地獄の待遇。なんせあの御嬢様は我儘で、傲慢で、人でなしで冷血で、使用人など家畜と同等としか思っていない恐ろしいお方なのだから。
いや、だったというべきか――。
「雷で生死の境をさまよってから、どうも人格が変わってしまったそうよ」
「またまたぁ。そんなに簡単に性格が変わるわけないじゃない」
「ところがどっこい、こないだキャサリンがつい手を震わせてお盆からグラスを落っことした時、お咎めにならなかったそうよ。それどころか、慌てて破片を手で拾おうとして怪我をした彼女の手をハンカチで包んでくださったんですって」
「あたしも聞いたわ。庭師のロバートが石畳に足をつっかけて転んでしまった時も、しゃがんで手を差し伸べてくださったんですって。いつもなら、『この愚鈍な豚が。ク・ビ・よ』とか言って、即刻屋敷を追い出しそうなものなのにねぇ」