~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

26(やってやりましたよ、御嬢様!)

 侵入したクラフトの部屋の印象は、整然の一言だ。

 いや、よもや王族の居室なのだから散らかっているはずもないのだが、にしても、ものの数が少ない。
 部屋のつくりや、絵画や置物といった調度品の数々は豪華なものだが、反面無駄を嫌うかのように彼個人の趣味を示すようなアイテムがほとんど見当たらないのだ。

 クラフトの持ち物だとかろうじてわかるのは、机周りや棚の中に納められているような小物でほとんど全部。しかしそこには、好き嫌いを示すような偏りも見受けられず、なんだか人間味がないと言ったらいいのだろうか。寂しさすら感じるような気がした。

(おっと、そんなことを考えてる暇はないですね~。早いとこ、例のものを見つけ出さなければ)

 ミリィは頭を振ると、部屋を子細に点検し始める。子供の手のひらサイズのものなど、隠す場所はいくらでもある。どれだけ時間があっても足りないが、宴が始まるまでに終わらせないとさすがに近衛たちも怪しむだろう。

 幸い、整頓されているおかげで探索は容易に進む。絵画の裏や壺の中、絨毯裏に照明の陰、設備周りを調べ終えたら、次は机や棚の中を入念に探る。
 しかし、二重底や、本の中への仕込みなどもひと通り探ったが、“永の蒼”は一向に見つからない。
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