~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

6(セニアーズ・クラフト(笑))

(セニア、あんた……)

 本当にできていたのだ。

 “セニアーズ・クラフト”――そう銘打たれた店舗が、ジェミーズ・ドロアーの前にでかでかと軒先を広げている。
 何度も目をこするが、多くの客の並ぶ姿にその繁盛ぶりは疑うべくもなく。

 ジェミーたちは空いた口が塞がらないまま大人しく列に並ぶと、その外観をまじまじと眺めた。
 他人事であれば、パクられてんじゃんありえな~いと笑いの種にすればそれで済んだろうが、ここまであからさまに堂々と模倣されてはもはや怒りを通り越して拍手喝采してやりたい気持ちまで湧いてくる。

 以前ジェミーズ・ドロアーを開店させた時のような長蛇の列に辟易しつつ、店や客層を眺めると、そこには明確な違いがあった。

 憎たらしいことに、淡いピンクとホワイトを基調とした店舗のメインカラーやデザインなどはジェミーズ・ドロアーを踏襲している。だが、外から見ても店内の品物はことごとく値段が異様に安価で、代わりに包装や、商品自体の外見は粗雑で手抜き感が目立つ。
 そして客層は平民中心だ。セニア自身が孤児院で出会ったこともあり、学内でも彼女の友人は圧倒的にそちらが多いようだったから、その伝手を使ってジェミーズ・ドロアーとは真逆の路線をつき進むつもりらしい。つまり、低品質で利率の低いものを薄利多売で売り捌くという戦略をとったようだ。
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