~転生悪役令嬢の裏道攻略~ シークレットキャラとたどり着く、処刑回避後のハッピーエンド

22(浮かび上がる思い出)

 細い黒髪をすーっと冷たい空気が撫で、ルゼは目を開く。

(今日も、助けは来ないか……)

 囚われた場所――そこは不思議な空間だった。
 地下であるはずなのに、どこをどう経由しているのか外気が入り、ほんのりと太陽の陽が差し込んでいる。
 周囲を囲う堅牢な石壁は閉塞感が出ないように豪華な塗装され、端々には見苦しくない調度品が置かれ、絨毯までが敷かれていて。

 その室内で、手を頭の下に敷いてベッドに横たわっていたルゼは、特にすることもなく天井を眺めた。

(当てが外れたかな)

 ルゼはウィリアムを信用しているが、しかしここに来てもう、体感で一月ほどの時が経つ。
 王都の地理に明るいあの老家令が探りを入れられないとは、クラフトはよっぽど巧妙な場所にルゼたちを隠したと見える。

「いやあ、困ったもんだな。今頃うちはどうなってるやら」

 話しかけられたので体を起こしてそちらに向けると、もうひとつのベッドでは、ペリエライツ家のひとり息子ウィンダスが横に寝そべった姿勢で苦笑している。
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