離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
第六章 心に宿るこの感情は

1. 絡む視線に

 言葉に表しがたい空気が二人の間に流れていたのはわずか数日のこと。意外にも早く元の空気に戻った。いや、戻されたと言った方が正しい。

 美鈴にとってはあの日の出来事は衝撃が大きく、数日でいつもの調子を取り戻せるような状態ではなかった。

 上手く目は合わせられないし、会話はぎこちない。触れられたことを意識して、変に距離を取ってしまう。そんな状態だった。

 それは何も美鈴にかぎったことではない。千博も最初はそうだった。あからさまに目を逸らしていたし、口数も極端に少なかった。

 明らかに互いを意識していた。

 けれど、数日が過ぎたある夜に突然変わったのだ。
< 111 / 216 >

この作品をシェア

pagetop