離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~

3. 抑えられない胸の高鳴り

 授業を終え、控室に戻った美鈴はお茶を飲んで一息つく。今日はこの後に予定があるから、あまりのんびりとはできない。さっさと帰り支度をして、約束の場所へ向かわなければならない。

 その前に携帯だけ確認しておこうと画面を点灯してみれば、そこには未読のメッセージを知らせる通知が表示されていた。すぐに通知からメッセージを開いてみる。

『早めに帰宅できたから、塾まで車で迎えに行く』

 送り主は千博で、かれこれ一時間前に受信している。このメッセージの通りなら、おそらくはもう家を出てこちらに向かっているはずだ。

 事前の約束では直接映画館で待ち合わせることになっていたが、帰りのことを考えて車にしたのだろう。自宅から一番近い映画館ではあるが、歩くと二十分以上はかかる。

 仕事で疲れている千博に運転してもらうのは少し気が引けるが、レイトショーで帰りの時間は遅くなるし、車で送ってもらえるのはありがたい。後でちゃんとお礼を言おうと決めて、すぐに帰り支度を始める。

 すると、そのタイミングで携帯がまたメッセージを受信した。今度は何だと確認してみれば、送信者はまた千博。『下で待っている』とのメッセージに彼が到着したことを知る。

「えっ、もう着いたんだ。急がないと」

 美鈴は超特急で支度を終え、同僚に挨拶をして塾を出る。ビルの外階段を使って一階に下り、きょろきょろと辺りを見回せば、すぐに千博が目に入った。千博は階段とは反対側のビルの端に立っている。
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