離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~

4. もう一度二人で

 ランチタイムで満席のレストラン。予約席へと案内された美鈴たちは四人掛けテーブルにそれぞれの友人と向かい合わせになって座る。

 すなわち、美鈴の向かいには洋子が、千博の向かいには手嶋が、そして、美鈴の隣には千博が座っている。

「せっかく上手くいったんだから、もっと二人の時間を大切にすればいいのに。出発は明日でしょ? 何もこのタイミングで私たちと過ごさなくても」

 洋子の言葉に手嶋も頷いている。けれど、美鈴にとっても、千博にとっても、今日のこの場は必要なものだった。

「千博さんと上手くいったのは、手嶋さんと洋子のおかげだから。どうしても出発前にお礼がしたかったの」

 手嶋が美鈴と千博のことを気にかけてくれていたことは、千博から聞いて知っている。だから、美鈴はどうしてもこの二人に感謝の気持ちを伝えたかった。それは千博も同様だ。

「僕も同じ気持ちだよ。あのとき浦部さんがけしかけてくれなかったら、この幸せは手に入れられなかった。本当に感謝している」
「おい、俺は?」

 自分を指さしながら問うてくる手嶋に、千博は苦笑を浮かべている。

「はあ、割り込むなよ……まあ、お前にも今回は感謝しているよ。お前にうるさく言われなかったら、もっと早くに美鈴を失ってたかもしれない。だから……ありがとう」
「そうか、そうか」

 素直に感謝を述べる千博に、手嶋はニヤニヤとした笑いを浮かべている。千博は気まずいのか、少し顔を逸らしていて、それがなんだかかわいかった。
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