DEAR 2nd 〜Life〜
第29章 愛美≠彩

第29章 愛美≠彩





第29章 愛美≠彩







───…夏休みに入って数週間。







「──んーっ……」






だれるような暑さの中、伸びをして布団から起き上がる。







「…あっつ…」







───…ミーンミーン……






夏特有の虫が大合唱を上げる、本格的な夏半ば。





あんな地獄のような場所から離れていると、どの場所でもあたしには天国で。




学校に通っている時よりも、体調はずいぶん落ち着いていた。







「───そろそろ用意し始めとこ……」






眠い目を擦りつつ、シャワーを浴びに歩き出す。







────ザァァァァ……






気持ちのモチベーション上げるために、お気に入りのバスグッズで全身を丁寧に洗っていく。





浴室は一気に上品な薔薇の香りが漂い、リラックスしつつ気分が上がった。







────今日は“Heaven”初出勤。






新しくて、まだ見たことない世界にワクワク期待しつつも───…





やっぱり、まだまだ緊張と不安でいっぱいで。





だから意味なく、こうして気合い入れちゃったりなんかして──…






「……いってきまーす。」






────…パタン……。





あたしは誰の見送りもない真っ暗な部屋に向かってそう呟き、ドアを閉めた。








───…夜もそろそろ深くなる頃。





“Heaven”にも明かりが灯り、舞い込んだ蝶達は今日も煌びやかに羽を広げ輝き始める。





───…あたしもまた、

メイクとヘアセットを終えて、ドキドキしながらHeavenへと足を踏み入れた。






「…うわぁ…」





シャンデリアが虹色に輝き、目も眩むような世界に胸が更にドキドキ。






……うひゃー!!!!来ちゃった。



ついに来ちゃったよ~!!







「────彩!



…っといきなり間違えた!




────愛美!」






テンパっているあたしの背後から声を掛けたのは美月。




同じく鮮やかなイエローのカクテルドレスに身を包み、ドレスアップした彼女は笑顔が輝いていた。





「美月~…もうどうしよう、緊張して死んじゃいそうだよー……」





「だぁーいじょうぶだって!!ホラ、朝礼始まるよ!」





「…ち、朝礼?」





何それ……。







────ザワザワ……






ホールには店長やスタッフ、キャバ嬢であろう女の子達が次々に集まり出した。


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