DEAR 2nd 〜Life〜
第38章 傷が疼く夜
第38章 傷が疼く夜
第38章 傷が疼く夜
─────…翌日。
────…カランカラン…
リースが飾られた木製の扉を開けると、ベルがこの日にピッタリの音を奏でる。
「いらっしゃいませ~」
あたしは忙しそうにしている店内に足を踏み入れ、平静を保ちながらも内心オドオドしながら立っていた。
「…あの、」
「いらっしゃいませ。
いかがされましたか?」
「───あ……
予約してたケーキ取りに来た桜井ですけど…」
「かしこまりました。
少々お待ち下さい。」
─────…そう。
あたしは以前に予約していたクリスマスケーキを取りにここに足を運んでいた。
もう必要がないからとはいえ……
せっかく作って待ってくれている店員さんの気持ちを考えるとキャンセルなんか出来なくて。
……とは言え
「───…ふぅっ…」
ハンカチ片手に冷や汗拭っているあたしは完全にクリスマス気分ゼロ。
ここまで来るのに、一体どれくらい時間が掛かったのか定かじゃない。
とりあえず街の浮かれてるモードに付いていけなくて、立ち止まったりしながらもやっとここまで辿り着いた。
────…だってさ?
「───…お待たせ致しました。
こちらでよろしいかご確認お願い致します。」
クリスマスケーキにこう言いたかったから。
「───…あの…
そのチョコプレートに書いてあるメッセージ……
変えてくれませんか?」
「え?」
「“メリークリスマス”じゃなくて…
“ハッピーバースデー”に変えてください…」
一瞬……
店員さんが驚いた顔をした。
だってそりゃそうだよね。
今頃メイン変更かよってあたしも思うよ。
「あ、はい。かしこまりました。
───じゃあえっと…
お名前は?」
「────…マリア…」
ケーキまで悲しい思い出にしたくないよ。
未来を塗り替えられるなら少しでも前向きに。
お世話になっている人や、心配かけた人に少しでも笑ってもらえるように…。
「───…お待たせ致しました。」
クリスマスからバースデーに形を変えたケーキを受け取り、あたしは歩き出した。