モデルなんてできません

番外編①

〜京介くんの苦悩〜

声をかけたのは、本当に気まぐれだった
‘お前も人物を撮れ。じゃないといつまでたっても腕があがらないぞ‘
師匠の青木さんに言われて、俺は仕方なく被写体を探す事にした 
被写体って撮りたい女なんかいないし

昔から女の子には不自由していない
小さい頃から佐久屋家の長男として育てられ、ちやほやされて育った  
見た目も良かったから女の子は寄ってきて、それなりに付き合ってきたけど、みんな俺の見た目と佐久屋の人間だから寄ってきただけで、俺自身を見ているわけじゃなかった
でも知沙は違ってた
付き合ってるというより、仲のいい親しい友人
ガールフレンドだった  
‘京介が本気でラブになれる相手を見つけてね‘
それがアメリカに行く前に知沙に言われた言葉だった

カメラマンの仕事をするようになって、モデルの奈美と知り合った
奈美には他にも男がいて、俺はただの遊び相手
俺も割り切って付き合っていた

夏樹を見かけたのは、あの日が最初じゃない
今まで何度か見かけていた
背はそんなに高くない
なぜか下ばかり向いている
眼鏡で損してそう
見た目をあんまり気にしていない
見ているだけで自分に自信がないのが分かった
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