妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

決まっていた答え

 ロヴェリオ殿下がヴェルード公爵家を訪ねて来ることは、最早珍しいことではない。
 私がここに来てからだけでも、何度も彼を迎え入れてきた。それは私にとっては、既に日常となっている出来事だ。故に彼に対しては失礼かもしれないが、特に緊張もしなくなっていた。
 だけど、今日のロヴェリオ殿下の様子に、私は久し振りに彼と対面する緊張というものを思い出すことになった。ロヴェリオ殿下はとても、真剣な顔をしていたのだ。

「ロヴェリオ殿下、今日はどうしたのですか?」
「え? ああ、いや、その、クラリアに話があって……」
「話、ですか」

 そんなロヴェリオ殿下と客室で二人きりで向き合っているという状況には、色々と感じざるを得なかった。
 何か真剣な話でもあるのではないだろうか。その予想は、多分間違ってはいない。問題はその内容である。
 もしかして、先日のマネリア嬢の顛末を知らせようとしているのだろうか。しかしそれは既に聞いているし、こんなに緊張するようなことでもないような気がする。
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