Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー

呪縛


「広之。もう時間だよ。起きて。」

下条小夜(しもじょうさよ)は朝になってもなかなかベッドから起き上がらない落合広之(おちあいひろゆき)の肩を揺らした。

「う・・・ん。ジュンコ・・・。」

また他の女の名前を寝言でつぶやいている。

その度に小夜は悲しい気持ちになる。

広之が浮気をしているのはわかりきっているけれど・・・

「広之!起きて!」

何回呼びかけても起き上がらない広之の掛け布団を、小夜は仕方なく思い切り引き剥がす。

「んだよ。寒いだろ。」

眠い目を擦りながらスマホを掴み、時間を確認した広之は飛び起きた。

「やべ!遅刻じゃん。お前、どうしてもっと早く起こさないんだよ!」

「何回も起こしたよ。」

「口答えすんじゃねーよ!この役立たずが。」

小夜の頬に広之の強いビンタが飛ぶ。

「・・・っ」

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