Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
裏切り
「それでは新郎新婦のご入場です!」
安室奈美恵の『CAN YOU CELEBRATE?』が会場内に流れ、厳かに扉が開くと、白いウエディングドレスを着た舞が、タキシードを着た新郎と腕を組み、ひな壇へと歩いていく。
今日の主役である花嫁は、小夜の大学時代の友人、北島舞だ。
「舞ちゃん綺麗!」
「ウエディングドレス似合ってる!」
客席からの声を受け、舞は誇らしそうに微笑む。
その姿に客席の一番後ろの円卓に座っていた小夜も、大きな拍手を送った。
「新郎の修司さんは我が栄光製薬の優秀な社員で・・・」
「新婦の舞さんは麗香化粧品の美容部員で、その美貌を生かし営業成績を上げ・・・」
「おふたりの出会いはご友人が主催したBBQ大会で、お互いに一目惚れして急速に距離が縮まり愛を深め・・・」
式を進行する女性司会者が、新郎と新婦の輝かしい経歴を、朗々とした口調で語リ続ける。
その出来事が小夜には遠い国のおとぎ話のように感じられた。
ひな壇に座る舞の笑顔は輝いている。
でも自分はあの場所に座り、あんな風に幸せな表情を浮かべることは、一生出来ないだろう・・・