Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー
捜査 ー桂木sideー
桂木が署に戻ったのは17時を過ぎていた。
「こんな時間まで一体何してたんだよ。こっちはお前の不在を誤魔化すの、大変だったんだからな。いくらお前が捜査一課のエースだからって、いつまでも課長は大目にみてくれないぞ?」
「・・・悪い。」
桂木は自分を睨み付けている捜査一課長の塩野を意識しながら、素直に謝った。
「女、だろ?衣服が乱れてるぞ?」
野間の好奇の目に、桂木は思わず緩んだネクタイを締め直した。
そして野間の誘導尋問に引っかかってしまった自分に舌打ちした。
「どこの女だ?まさか今日聞き込みした女じゃないだろうな?」
心臓が波打ったが、顔に出さない自信はあった。
「そんなわけあるか。あんな子供みたいな女、タイプじゃない。」
「じゃあどこの女だ?」
「・・・東口にあるキャバクラの女だよ。」
「ほんとかよ?お前は素人の女にしか興味ないと思ってたけどな。」
「いちいちうるせえな。俺の女の趣味に口出しすんな。」
「ま、励むのはいいが、ほどほどにしとけよ?」
軽口は終わりとばかりに、野間は真面目な口調で言った。
「捜査資料だ。読んどけ。明日は俺と一緒に関係者の聞き込みに行くからな。」