Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー

自首 ー桂木sideー


1週間後――



朝、桂木が目を覚ますと隣で寝ていた小夜はもういなかった。

ここ2.3日、小夜の様子がおかしい。

妙に塞ぎ込んだかと思えば、じっと桂木の顔を切なげにみつめたりする。

「どうした?不安か?」

「・・・ううん。」

小夜は首を振り、小さく微笑む。

けれどやはり不安定な様子は続いていた。

ベッドから起き上がり、洗面所で顔を洗う。

いつもならキッチンから小夜が朝食を作る物音が聞こえてくるのに、今朝は静まりかえっていた。

妙な胸騒ぎを覚え、桂木は小夜を探した。

「小夜!どこだ!」

風呂場、キッチンはもとより、寝室、リビング、そして物置やトイレ・・・どこにも小夜の姿は見当たらない。

どうしても足りない食材があって、買い物にでも行ったのか・・・?

しかし小夜はこれまで、桂木の言うことを守り、ひとりで外に出ることなどなかった。

出勤時間ギリギリまで小夜の帰りを待ったが、タイムオーバーとなり、仕方なく桂木はスーツに着替え、部屋を出た。

小夜に合鍵は持たせてある。

きっと俺が帰るまでに小夜は部屋に戻っているはずだ・・・そう自分に言い聞かせ、桂木は署へ向かった。
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