Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー

少女


小夜が自首する4日前―――



小夜はその日の午後、桂木の為にビーフシチューを煮込んでいた。

小夜が部屋に来る前の桂木は、簡単な料理はするが、出来合いの弁当や惣菜も多かったらしい。

アルコールを多量に摂取していたことも、冷蔵庫内の缶ビールの量で想像がつく。

「野菜やもっと色んな食べ物もバランス良く食べなきゃ駄目だよ?」

そう言って小夜は、桂木に家庭料理を作り食べさせた。

桂木は食べ物の好き嫌いがないようで、小夜が作った料理を残さず食べた。

そして食べ終わると必ず「旨かった」と言ってくれた。

こんな生活がずっと続けばいいのに。

身も心も疲弊する刑事という過酷な仕事の桂木を、一生支えながら生きていきたい・・・

小夜はそんなささやかな願いを込めて、ビーフシチューに浮かぶオレンジ色の人参を見ながら微笑んだ。
< 99 / 163 >

この作品をシェア

pagetop