どん底貧乏美女は夢をあきらめない

全財産3800円也

たった3年だけど、大学卒業後役員秘書として働いた建築会社が、業績不振で他社に吸収合併されて職を失った。

夢野美玖25歳。

3年のうち1年前からは社長秘書として働いた会社だ。

社長は人格者で周りの人にも思いやりのある尊敬できる上司だった。

合併後は役員全員退職となり、秘書室も解散となった。

ほかの部署はみな新しい会社にそのまま残れることとなったのは幸いだった。

社長は秘書室のみんなに申し訳ないと頭を下げてくれたが、誰一人社長を恨んだり悪く言うものはいなかった。

今日で最後の出勤日、みんなで別れを惜しみながら秘書室を後にしようとした美玖を、相手先の会社の副社長がチョイチョイと手招きした。

「君美人だね。僕の好みだ。
君が望むなら僕の秘書として
残るという手段もあるよ」

とねちっこい目で美玖のお尻をなでながらほざきやがった。

もちろん速攻で、尻をなでる手をねじり上げ,足をヒールの先で踏んづけながら

「あら、それは光栄ですわ。でも、
あいにく養豚業の経験はなくて、
お役に立てそうもありませんわ」

と言い放った。

小太りたれ目の脂ぎった少なめの髪を8:2に分けた副社長は、

「いたたたたた、おい何するんだ」

と叫んで飛びのいた。

”た、が多すぎるんだよっ”と心の中で毒付きながら、美玖は

「あら、失礼いたしました」

とスルーして会社を後にした。
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