どん底貧乏美女は夢をあきらめない

夢だった仕事をゲット!

「今日からはさすがにお願いできないけど
明日から来てもらえるなら助かるよ
どうぞよろしく」

そう言って榊は手を差し出した。

美玖はその手を両手で握りしめて涙目で声にならずただ首を縦に振るだけだった。

やっと自分の夢に向かってスタートを切れる。ここまで来るのに4年かかった。

美玖は号泣したいほどうれしかった。

涙をこぼさないように必死に唇をかんで堪えた。

そのあと、落ち着いた美玖は、榊に尋ねられるままに、退職してからのことを話した。

大学卒業時にあきらめて秘書としての仕事についてしまったので、今回は絶対諦めたくなかった事や、奨学金の返済や実家への仕送りもあり今月決まらなければ家賃も払えず、一度実家に帰る事になる所だったと、ほっとしたように言う美玖に

「じゃあ、お金ないんじゃないの
お給料の前借りする?」

とまで言ってくれる榊に感動した。

「いいえ、大丈夫です。就職先が決まって
来月にはお給料も多分いただけるので、
母に話して少し送ってもらいます。
いつも仕送りしているので、
多分助けてくれると思います」

「でも、今まで実家に泣きつかず
頑張ってきたんだろう?
そんなこと言ったら心配させるん
じゃないの?」

「でも、就職が決まったので言えます。
大丈夫です。
いつも倹約節約生活は慣れているので
家賃分だけ送ってもらえば
何とかなります」

「何とかなるって、まだひと月あるよ。
僕も人のことは言えないけど、
計画性がなさすぎるよ。
切羽詰まる前に実家に頼るべきだよね。
まさか、失業後も実家に仕送り
していたのか?」

「はい。私の腹つもりでは先月中には新しい
職場が見つかっているはずだったので、
実家には何も言ってなくて、だから
いつも通りに送ってました。
っていうか、自動送金にしてあるんです」

「ほんとに、どこまで人がいいの。
自分の生活をまずしっかりとしないと、
偉そうに仕送りしてる場合じゃない」

と榊は呆れている。

< 11 / 73 >

この作品をシェア

pagetop