逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第24話

 タクシーを待つあいだ、私は近くのコンビニまで走ってミネラルウォーターを買ってきた。「だぐらす」の前のベンチに座る蓮さんは、これまで見たことがないほど憔悴した顔をしていた。

「蓮さん、大丈夫?」

 ペットボトルを差し出しながら声をかけると、蓮さんは小さく「ごめん」とつぶやいた。頭痛がするのか、こめかみに手を当て深く息を吐く。

「……もう七、八年くらい、飲んでなかったんだ。コーラとミントの香りが強くて、アルコールが入ってるって気づかなかった」

 そう言ってキャップを開け、一気に水を飲み干す。透明な雫が喉元をつたって落ちていく。とにかく早く、体の中のアルコールを薄めたい……そんなふうに見えた。

「ごめんね、蓮さん」

「薫のせいじゃない。気にしないで」

 つらそうな顔をしていたけれど、蓮さんは私の方を見て、わずかに口元をゆるめた。

「蓮さんは……お酒が苦手で、ソーバーキュリアスになったの?」

 その問いかけに、蓮さんは私から視線を外し、どこか遠くを見つめた。言葉にしかねる何かを、胸に抱えているようだった。
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