逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第25話

「蓮くん、デートに行こう。とびっきり美味しいみたらし団子をおごってあげるから」

 おばあちゃんはそう言って、蓮さんを連れ出した。彼はどこか思い詰めたような表情のまま、おとなしく車に乗り込んでいく。

 いつもなら静かな自信に満ちている蓮さんが、少ししょんぼりしている姿は──気の毒なはずなのに、なんだか妙に可愛らしい。そんな自分をひどいやつだと思いつつ、心の中でそっと『ドナドナ』を口ずさんだ。

 帰りの新幹線は午後イチ。また明日香ちゃんが送ってくれることになっていたので、お礼も兼ねて、彼女にランチをおごることにした。

 久しぶりに訪れた駅前は、思った以上に変わっていて、おしゃれなカフェやレストランが立ち並んでいた。どこに入ろうかと迷ったけれど、結局足が向いたのは、高校時代から通い詰めた馴染みの洋食屋さんだった。

「昨日はごめん!」

 席につくなり、明日香ちゃんが勢いよく頭を下げる。私は苦笑いしながら首を振った。

「謝らないで。明日香ちゃんは全然悪くないよ。蓮さんも、すぐに元気になったし」

 実際には、蓮さんはまだ元気とは言えない。でも、明日香ちゃんを責めたくなくて、優しい嘘をついた。自分で優しいって言っちゃうのも何だけど。
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