逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第26話

 その後の会話で、蓮さんが大手企業のエリートだと知った途端、駅まで見送りに行きたいだの、名刺交換したいだのと騒ぎ始めた和樹を、私と明日香ちゃんはやんわりと断り、一度家に戻ることにした。

 ハンドルを握りながら、明日香ちゃんは「和樹も都会の荒波に揉まれて、肩書を気にする大人になっちゃったのか……」と、どこか寂しそうに呟いた。

 ちなみに彼女は、地元では誰もが羨む信用金庫の窓口勤務。ホワイト企業で、給料も地元トップクラスという噂だ。

 私はそのとき何も言わなかったけれど、ブラックな環境で日々こき使われている身としては、和樹の気持ちもほんの少しだけ理解できてしまった。

 和樹は昔から勉強もスポーツもできて、いつも仲間たちの中心にいた。大学時代も、きっと似たような立ち位置だったのだろう。

 けれど、社会に出れば状況は一変する。自分と同じ、あるいはそれ以上に優秀な人たちがゴロゴロいて、しかも評価は単純な能力だけで決まるわけじゃない。どんな人と、いつ、どこで出会ったか。どんなコネを持っているか。運に左右される部分も、少なくない。
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