逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第37話

 広瀬さんに通されたのは、エルネストEP社の社内クリエイターたちが集中したいときに使う、小さな部屋だった。

 壁は無機質なオフホワイトで、静かに稼働する空気清浄機がひんやりとした空間を保っている。部屋の中央には、ぽつんとテーブルとイスだけが置かれていた。

「まるで、アメリカの刑事ドラマの取調室みたいですね。もしかして、今日のノルマ分を書き終えるまで、ここから出られないとか?」

 私は軽く笑いながら冗談を言った。広瀬さんはドアを後ろ手に閉め、ため息をついた。

「本当は、出雲くんのいるユニットの部屋を借りてたんだけど、あなた、浮気現場見た後で彼と顔合わせたくないでしょう?」

 広瀬さんは、本当に遠慮がない言い方をする。

「……まだ、浮気と決まったわけではないですよ?」

 そう答えると、広瀬さんは少し眉をひそめた。

「私には、あの二人は親密な恋人同士に見えたけど」

 その言葉に、私は何も言えなくなる。実のところ、私の目にもそう映っていたのだ。
< 240 / 531 >

この作品をシェア

pagetop