逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第42話

 私はエルネストEP社の向かいにあるカフェの窓際席に座っていた。

 何度も頭を抱えたり、窓越しに空を見上げたりしては、ため息ばかりついている。いきなり顔を覆って机に伏せたり、コーヒーが少しだけ残ったマグカップをぐるぐる回したり……。傍から見たら、完全に怪しい人である。

 窓の外には、あの日、蓮さんと理央さんが抱き合っていたツリーが見える。かなり早く着いてしまったので適当に入ったカフェだったが、意外とショック療法になっている……かもしれない。

 私が今、頭の中でシミュレーションしているのは、2時間後に向かいのビルで蓮さんと会う場面だ。

 あの夜以来の再会というだけでドキドキが止まらないのに、その直後に彼が恋人と抱き合う姿を目撃し、さらにその恋人と対面。そんな状況をすべて抱えたまま、仕事の打ち合わせに臨まなければならないなんて……だれが想像できただろう。これまで恋愛とは縁遠かった私にとって、あまりに重すぎる試練だ。

「仕事だから、堂々としていればいい」と、自分に言い聞かせる。だけど、ドラフトに絶対的な自信があるかと言われると、言葉に詰まってしまう。
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