逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第7話

 3週間後の土曜日、私たちは一日かけて引っ越し作業を行った。

「荷物、意外と少ないんだね」

 私のアパートの部屋に置かれた、運び出されるのを待っている3箱の段ボールを見て、蓮さんが驚いたように言う。

「片付けが苦手って聞いてたから、正直、テレビで見るような散らかった部屋を想像してたんだ。でも、これなら普通の人より少ないくらいだね」

 そんなことまで想像していても結婚を決めた蓮さんの度胸には関心する。

「あのね、私は忙しいと片付けを後回しにしちゃうだけで、手放すことに関しては結構思い切りがいいんです。ちなみに、エアコンのリモコンも無事に見つかりました」

 自慢げに言った後、ふと申し訳ない気持ちになった。

「でも、ごめんね。これくらいならタクシーでも運べたね。せっかくの休みの日を、引っ越しの手伝いに使わせちゃって」

「全然構わないよ、今はそんなに忙しくないし。もう少ししたら忙しくなるけどね」

 蓮さんは、大手IT企業「エルネスト・エンタープライズ」でチームリーダーを務めている。

 ITからエンターテインメントまで総合的に手掛けており、上場企業として業績は順調。待遇や福利厚生の充実ぶりからホワイト企業として有名で、毎年、就職活動中の学生が殺到するほどの人気ぶりである。

 彼は、私より3歳年上の30歳。その若さでチームリーダーに就いているということは、将来を嘱望されるエリートなのだろう。

 ホワイト企業か……羨ましい。私の職場は残業が常態化していて、定時に帰った記憶なんてもうずいぶん昔のことだ。まさに天国と地獄。
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