逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第53話

 12時50分に、会社のエントランスに到着した。

 フレックス勤務なので、本来なら13時までに出社すれば問題ないはずだった。だけど、もしこの時間に倉本先生がオフィスにいたら、あからさまに不機嫌な態度を取られるだろう。無用な衝突は避けたい。

 私はコモンルームの隅からそっとオフィスを覗き込み、先生の在席を確認することにした。

 レトロシックなグリッタースーツに虹色のカラフルなスカーフ──遠目からでもひと目でわかる個性的なファッションの先生は、すぐに見つかった。しかし、その様子はいつもと違っていた。

 焦りと不安、そして苛立ちが入り混じった表情で、先生はスマホ越しに誰かと言葉を交わしていた。そして、足早に自分のコーナーオフィスに入り、ドアを荒々しく閉めた。

 先生がいなくなってからオフィスにそっと足を踏み入れると、友記子が私を見つけて慌てて駆け寄ってきた。彼女の表情もどこか険しい。

「友記子、一昨日(おととい)はありがとう。先に帰っちゃってごめんね」

「ううん、こっちこそ、出雲さんにご馳走になっちゃって。お礼を伝えておいて」
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