逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第64話

 家に帰ると、蓮さんはまだ戻っておらず、祐介が一人で夕食の準備をしていた。今日のメニューは、生姜をたっぷり使った鶏団子鍋らしい。

 土曜日に、知里さんたちとランチをすることになった話をすると、祐介が目を大きく見開き、歓声を上げた。

「ええっ、姉ちゃん……春木賢一朗とダブルデートすることになったわけ!?」

 彼の目は、面白くて仕方がないと言わんばかりに輝いていた。その姿はまるで、何か楽しいイベントを嗅ぎつけた大型犬のようだった。

「なんてことだ! 俺も春木賢一朗のダブルデートに参加したかった! ああ、でもその日は運命のオーディションが……!」

「オーディションがなくても、知里さんから『祐介は連れてくるな』って言われたよ。春木賢一朗の話を立ち聞きしてたのがバレバレで、警戒されてるみたいだった」

 祐介の目がさらに大きく開く。今度は純粋に驚いているようだった。

「え、もしかして俺……広瀬さんに本格的に嫌われちゃった?」

 彼の表情を見て、少し胸が痛んだ。根は優しい弟を傷つけたくはなかったが、彼にも非がある以上、真実を伝えるしかない。
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