逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
第66話
食事が始まってしばらく経ってからも、私は心の中でずっと問い続けていた。
──ダブルデートって、こういうものだっけ?
これまでも、カップルを含む友人たちと食事をしたことは何度もあった。でも、そのときはみんなで笑い合い、和やかに過ごしていたはずだ。ところが……今日の空気はまるで違っていた。
「あなたの目標は春木賢一朗の作品を映像化することなんですね。……でも、どうしてだろう。あなたの口からほかの男の名前が出るたびに、僕は少し心穏やかでいられなくなる」
「ふふ、そんなことを言って、私をからかって楽しんでるんでしょう? もしあなたが春木賢一朗だとしたら、私はあなたの手のひらで踊らされているコマね。でも、今日くらいは特別に踊ってあげてもいいわ」
「それは感謝しなくては。あなたが踊る姿を特等席で楽しめるなんて、贅沢なひとときですからね」
二人のやり取りについていけず、私は横に座る蓮さんの顔をそっとうかがった。蓮さんも私に視線を返し、礼儀正しい微笑みを浮かべて小首をかしげる。
その表情はまるで「この会話、どこに向かっているんだろうね」と問いかけているようだった。
これは──ダブルデートというより、バーカウンターで繰り広げられる大人の駆け引きの観察会だ。
料理が一段落したころ、知里さんのスマホが軽く振動した。彼女は画面を確認すると「広告代理店から。ちょっと失礼するわ」と言い残して席を立つ。テーブルには、私たち三人だけが残された。
──ダブルデートって、こういうものだっけ?
これまでも、カップルを含む友人たちと食事をしたことは何度もあった。でも、そのときはみんなで笑い合い、和やかに過ごしていたはずだ。ところが……今日の空気はまるで違っていた。
「あなたの目標は春木賢一朗の作品を映像化することなんですね。……でも、どうしてだろう。あなたの口からほかの男の名前が出るたびに、僕は少し心穏やかでいられなくなる」
「ふふ、そんなことを言って、私をからかって楽しんでるんでしょう? もしあなたが春木賢一朗だとしたら、私はあなたの手のひらで踊らされているコマね。でも、今日くらいは特別に踊ってあげてもいいわ」
「それは感謝しなくては。あなたが踊る姿を特等席で楽しめるなんて、贅沢なひとときですからね」
二人のやり取りについていけず、私は横に座る蓮さんの顔をそっとうかがった。蓮さんも私に視線を返し、礼儀正しい微笑みを浮かべて小首をかしげる。
その表情はまるで「この会話、どこに向かっているんだろうね」と問いかけているようだった。
これは──ダブルデートというより、バーカウンターで繰り広げられる大人の駆け引きの観察会だ。
料理が一段落したころ、知里さんのスマホが軽く振動した。彼女は画面を確認すると「広告代理店から。ちょっと失礼するわ」と言い残して席を立つ。テーブルには、私たち三人だけが残された。