逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第69話

 クリスマスイブを翌日に控えた夕暮れの街は、どこか浮かれたような賑やかさに満ちていた。その喧騒から逃れるように、私と祐介は、指定されたミーティングルーム付きの喫茶店へと足を踏み入れた。

 私は気が重かったが、祐介はむしろご機嫌だ。……少なくとも祐介が楽しそうでよかった。付き添いで来てもらっているのだから、楽しんでもらえてありがたいと思わなければ。

 オーセンティックな給仕服に身を包んだスタッフに案内され、店の奥へと進む。ミーティングルームのドアをノックすると、中から「どうぞ」とよく通る声が響いた。

 ドアを開けると、窓際に立つ長身の男性がシルエットとなって浮かび上がった。その影が、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。

「やあ、来てくれて光栄だよ」

 ミステリアスな切れ長の目、シャープなフェイスライン、よく通った鼻筋と魅惑的な唇。その整った顔立ちをさらに際立たせているのは、細いストライプの入ったダークネイビーのスリーピーススーツだ。バーガンディの織り柄タイと、同色のパフドスタイルのポケットチーフが、遊び心のあるエレガントさを添えていた。

 隣で祐介が「うわっ」と感嘆の声を漏らす。
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