逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第72話

「知里さん、それは違います!」

 私は必死に首を振った。

「どう違うのか、説明してちょうだい、薫」

 誤解を解こうと口を開きかけた瞬間、須賀さんの言葉が脳裏をよぎった。

 ──戻ったら、すぐに彼女に話すつもりだ。きちんと話をして、僕という人間を見てもらえるようにするよ──

 喉まで出かかった言葉を、私は飲み込んだ。……今、私が話していいことではない。

 沈黙する私を見つめる知里さんの目が、徐々に冷たさを帯び、鋭さを増していく。

「祐介くんは……社内で春木作品の映像化について探り、次回作を提供するように、須賀さん──いえ、春木賢一朗を口説き落としたってこと? オーディション合格と引き換えに?」

「違います! 知里さん、必ず説明しますから、どうかもう少しだけ待ってください!」

 懇願する私を、知里さんは怒りを押し殺した冷たい目で見つめた。その瞳には抑えきれない疑念と苛立ちが宿り、彼女が次第に冷静さを失っていくのがはっきりとわかった。

「あなたも……出雲くんから須賀くんに乗り換えようとしていたんじゃないの? ベストセラー作家と付き合えば、脚本家としての箔もつくでしょうしね!」

「知里さん!」

「触らないで!」
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