逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
第74話
譲原喜八さんに初めて会ったのは、祐介の授賞式でのことだった。
授賞式は、格式あるホテルで執り行われた。広々とした宴会場には100人を超える関係者が集まり、華やかな熱気に包まれている。
その中央で、他の受賞者たちと談笑している祐介が見えた。この日のために新調したというハイブランドのスーツが、遠目にもよく映えていた。
式が始まると、私は壁際に立ち、役員たちのスピーチを聞くともなく聞いていた。賑やかな場所は、あまり得意な方ではないのだ。
祐介の番になった。少し緊張した様子で壇上に立った彼は、軽いユーモアを交えながら感謝の言葉を述べ、作家としての決意を語る。会場に拍手が響いたとき、不意に隣から声がした。
「春木賢一朗先生の『風が消える庭』、素晴らしいミステリでした」
横を見ると、丸メガネをかけた小柄な男性が、壇上の祐介を静かに見つめていた。古いが丁寧に手入れされた背広──スーツではなく──のポケットからは、繰り返し読まれて角が丸くなった文庫本がのぞいている。
「春木先生のお姉さんですよね。私、編集者の譲原と申します」
授賞式は、格式あるホテルで執り行われた。広々とした宴会場には100人を超える関係者が集まり、華やかな熱気に包まれている。
その中央で、他の受賞者たちと談笑している祐介が見えた。この日のために新調したというハイブランドのスーツが、遠目にもよく映えていた。
式が始まると、私は壁際に立ち、役員たちのスピーチを聞くともなく聞いていた。賑やかな場所は、あまり得意な方ではないのだ。
祐介の番になった。少し緊張した様子で壇上に立った彼は、軽いユーモアを交えながら感謝の言葉を述べ、作家としての決意を語る。会場に拍手が響いたとき、不意に隣から声がした。
「春木賢一朗先生の『風が消える庭』、素晴らしいミステリでした」
横を見ると、丸メガネをかけた小柄な男性が、壇上の祐介を静かに見つめていた。古いが丁寧に手入れされた背広──スーツではなく──のポケットからは、繰り返し読まれて角が丸くなった文庫本がのぞいている。
「春木先生のお姉さんですよね。私、編集者の譲原と申します」