逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第77話

 これ以上ないほど沈んだ気分で、私と祐介はタクシーを降り、蓮さんのテラスハウスの前に立った。

 家の中は静まり返り、人の気配はない。

 私はドアを開けて室内に入り、祐介のためにドアを押さえた。でも、彼はポーチに立ったまま動こうとはしなかった。

「祐介?」

 声をかけると、彼は俯いて微かに呟いた。

「……俺、ここに泊まる資格ないよ」

 その顔には、行き場のない罪悪感が滲んでいる。

 クリスマスディナーを作れなくなったことは、すでに蓮さんにメッセージで伝えてあった。返ってきたのは「わかりました」の一言だけ。

 もともと蓮さんは、必要最小限のメッセージしか送らない人だ。それでも今回ばかりは──知里さんから、私たちがスパイかもしれないと聞かされたせいで、余計に素っ気なくなったのではないか。そんなふうに考えてしまう。

 誤解はすぐに解けると思っていたのに……知里さんが想像していた最悪の展開が、現実になってしまった。

 せめて、須賀さんのことだけでも本人の口から説明してもらおうと、私は出版社を出てすぐに須賀さんの番号を押した。
< 499 / 531 >

この作品をシェア

pagetop