逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第80話

 ゆっくりと意識が浮かび上がる。

 目を開けると、窓の外では群青の空が淡く溶けるように色を変え、静かに朝へと向かう気配がした。街はまだ眠りの中にいて、その澄んだ静けさが、そっと部屋へと流れ込んでいるようだった。

 伸びをしようとした瞬間、右手が温かい指に優しく絡め取られていることに気づいた。横を向くと、すぐそばで蓮さんが穏やかに眠っている。

 窓から差し込む微かな光が彼の髪を柔らかく照らし、くせ毛のカーブを緩やかに浮かび上がらせる。伏せられた長いまつ毛と、わずかに開いた形のいい唇。その無防備な寝顔を見ていると、胸の奥にそっと灯りがともるような、温かい気持ちが広がっていった。

 彼を起こさないようにそっと指を解き、人差し指でくせ毛をなぞる。小さく「私のマッドサイエンティストさん」と呼びかけたけれど、規則正しい寝息は変わらない。

 ──恋人だから……いいよね。

 私は小さく息を吸い、そっと蓮さんに顔を近づけた。

 ほんの一瞬、触れるだけのキス。それなのに、唇が重なった瞬間、全身が熱を帯びるのがわかった。

 もう一度……してもいいかな。というか、したい。

 そんな思いが胸をよぎった次の瞬間──枕元のアラームが遠慮なしに鳴り響いて、私は思わず飛び跳ねそうになった。

 蓮さんがゆっくりと手を伸ばし、スイッチを止める。
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