逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
第81話
最後の出社日だった。
私はスタジオ・マンサニージャのエントランスの前に立つ。大学を卒業してこの会社に就職してから、もう6年──。長いようで、振り返ればあっという間だった。
徹夜が続いたり、理不尽な指示に振り回されたり、締切を急に早められたり……。辛いことは山ほどあったはずなのに、今思い出されるのは、楽しかった瞬間や達成感を味わった記憶ばかりだ。
エントランスのステップを上がり、まずは先生のコーナーオフィスへ挨拶に向かう。
倉本先生は、その日の機嫌次第で態度が180度変わるタイプの人だ。予測不可能なので、ドアをノックする前はいつも少し緊張する。そして今日の倉本先生はといえば──気味が悪いほど、機嫌が良かった。
「あらぁ、椿井ちゃん。今日が最後だったのねぇ」
持参した老舗菓子店の最中を差し出し、私は深々と頭を下げる。
「先生、今まで大変お世話になりました」
「いいのよ、椿井ちゃん。あなたがいなくても、会社は安泰だから」
……まあ、そうかもしれないけれど、もう少し言い方ってものがあるのではないだろうか……。
だけど、この遠慮のない物言いも今日で最後だと思うと、少しだけ寂しくなるから不思議だ。私は改めて、心から感謝を込めて言った。
「本当にありがとうございました。ここで学んたこと、きっとこれからも活かしていきます」
私はスタジオ・マンサニージャのエントランスの前に立つ。大学を卒業してこの会社に就職してから、もう6年──。長いようで、振り返ればあっという間だった。
徹夜が続いたり、理不尽な指示に振り回されたり、締切を急に早められたり……。辛いことは山ほどあったはずなのに、今思い出されるのは、楽しかった瞬間や達成感を味わった記憶ばかりだ。
エントランスのステップを上がり、まずは先生のコーナーオフィスへ挨拶に向かう。
倉本先生は、その日の機嫌次第で態度が180度変わるタイプの人だ。予測不可能なので、ドアをノックする前はいつも少し緊張する。そして今日の倉本先生はといえば──気味が悪いほど、機嫌が良かった。
「あらぁ、椿井ちゃん。今日が最後だったのねぇ」
持参した老舗菓子店の最中を差し出し、私は深々と頭を下げる。
「先生、今まで大変お世話になりました」
「いいのよ、椿井ちゃん。あなたがいなくても、会社は安泰だから」
……まあ、そうかもしれないけれど、もう少し言い方ってものがあるのではないだろうか……。
だけど、この遠慮のない物言いも今日で最後だと思うと、少しだけ寂しくなるから不思議だ。私は改めて、心から感謝を込めて言った。
「本当にありがとうございました。ここで学んたこと、きっとこれからも活かしていきます」