逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第12話

 よく考えてみたら、私が何もしなくても、蓮さんのプロジェクトも脚本もきっと大丈夫。そう思うようになった。

 だって、航のバックには、恋愛モノのシナリオマスター、倉本先生がついているんだもの。

 この業界では、弟子が先生の脚本を代筆するのは勉強の一環で、よくあること。だとしたらその逆──先生が航の脚本を書く──も、最終手段としてアリなのではないか。

 もちろん、先生だって弟子の名前の作品なんて書きたくないだろう。だから本当に最後の手段、事務所の存続と先生のプライドを天秤にかけるという局面での、「ナシよりのアリ」的な選択肢だ。

 それに、生き馬の目を抜く業界で勝ち残ってきた先生のことだ。共作として、自分の名前をエンドロールにねじ込むくらいのことはするに決まっている。

 もしかしたら、航が覚醒してめちゃくちゃ素晴らしい脚本を書き上げる可能性だってゼロじゃない……かも。

 結論として、私はこの話には一切タッチしないことに決めた。見ざる、言わざる、聞かざるに徹するのだ。

 そうだ、次の休みに日光東照宮まで足を伸ばして、三猿に挨拶しよう。「よっ! 私もあなたたちの仲間だよ!」って。
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