逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第13話

 鳴り物入りで始まるかのように思われた、『見ざる、言わざる、聞かざるプロジェクト』だったが、その勢いは翌日にはあっけなく崩れ去った。

 月曜の朝、珍しく早く出社した倉本先生は、『ツイスター』のF5級トルネードのごとく航と営業部長を巻き込み、ガラス張りの会議室へと引きずり込んでいった。

 ドアが閉まると同時にブラインドが降ろされる。前々から会議室の予約を入れていた社員たちは、気の毒なことに、コモンルームの隅に追いやられることとなった。

 きっと、蓮さんに聞いた話の打ち合わせに違いない。

 職場には、結婚のことは話していない。それはひとえに、籍を入れるまでは面倒なことは避けたいという、私にとって重要な理由があるからだ。

 それに、倉本先生は仕事になると飢えたハイエナのような姿勢に変わる。もし私が蓮さんの妻になると知れば、「椿井ちゃ〜ん」と猫なで声で近づき、自分の都合のいいように利用してくるだろう。
< 61 / 531 >

この作品をシェア

pagetop